古い家のリフォームは、住宅の寿命や居住性を維持するために重要なステップです。木造住宅の平均寿命は約65年とされていますが、これは取り壊された住宅も含むため、一概に寿命を決めることはできません。実際の寿命は気候やメンテナンス状況によって大きく左右されます。
この記事では、リフォームが必要なタイミングやリフォームにかかる費用、リフォームと建替えの比較、そしてリフォームのメリットとデメリットについて詳しく解説します。リフォームを検討している方にとって、実際に役立つ情報が満載です。
1.古い家のリフォームはいつ必要?
2011年に行われた調査では、木造住宅の平均寿命は約65年となっています。ただし、このデータにはまだ住めるのに取り壊された家などが含まれるため注意が必要です。
木造住宅の寿命は、気候やメンテナンス状況などによって変わります。普段からこまめに家の状況をチェックし必要に応じてリフォームすることで、愛着ある家に長く住み続けることができます。家の劣化が進んでいる場合や間取りを大きく変えたい場合は、思い切って建て替えることも1つの方法です。
2.古い家のリフォームにかかる費用
場所ごとのリフォーム費用相場の目安は、次の通りです。
水回りのリフォーム |
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リビング内装のリフォーム | 約10万~150万円 |
電気配線の引き直し | 約50万円~ |
屋根のリフォーム | 約50万~120万円 |
耐震補強工事 | 約25万~250万円以上 |
断熱工事 | 約20万~120万円 |
間取り変更 | 約15万~500万円以上 |
バリアフリー工事 (1か所あたり) |
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劣化しやすい水回りのみのリフォームは、費用を安く抑えることが可能です。間取りを変えることもできますが、2×4住宅の場合は間取り変更が制限されるケースもあります。
また、2000年以前に建てられた木造住宅の中には現行の耐震基準を満たさないものが少なくありません。リフォーム後も安心して暮らし続けるため、耐震補強工事の検討をおすすめします。
2-1.建替えとの費用の比較
木造住宅のリフォーム費用は平均約350万~2,500万円、建替え費用は平均約1,500万~4,500万円です。また、国土交通省の発表によると2022年度における建替え費用は平均4,487万円でした。
リフォームは多くの場合、建替えより安く済むものの、実際の費用はリフォームの範囲や建材・部品の選び方などによって変動します。住宅の状況やリフォームのメリット・デメリットなどを確認しつつ、どちらを選ぶか検討しましょう。
3.古い家をリフォームするメリットとデメリット
古い家をリフォームする主なメリットは、次の通りです。
- 慣れ親しんだ家に住み続けられる
- 住宅購入や建て替えより費用が安い
- 再建築不可物件でもリフォームできる場合がある
自宅をリフォームすることで毎日の生活がより快適になり、多くの場合に住宅購入や建替えよりも低コストで済みます。リフォームした家には新築住宅のような高い固定資産税がかかることは少なく、一定の条件を満たすと所得税などの控除を受けることも可能です。
一方、古い家のリフォームには次のようなデメリットがあります。
- 家の状態やリフォームの施工内容によっては、リフォーム費用が高額になる
- 部分リフォーム後、別のリフォーム工事が必要になることもある
- 地盤改良はできない
築年数の古い家ほど劣化が激しく、リフォーム費用がかさみがちです。部分リフォームの場合は、工事後に他の部分が劣化して新たな工事が必要となる可能性もあります。また、地盤を補強したい場合は建替えと地盤改良工事が必要です。
4.古い家をリフォームする際のポイント
リフォームにかかる費用や時間のロスを防ぎ、かつリフォーム後も長く快適に住み続けるためには、いくつかのポイントが欠かせません。古い家のリフォームにあたって注意したいポイントは、次の通りです。
4-1.防災について考慮する
安全な家づくりのポイントは、耐震補強だけではありません。例えば、万が一割れても破片が鋭利になりにくい防災ガラスや燃えにくい建材などは、火災・台風に加えて防犯対策にも有効です。また、太陽光発電システムや蓄電池などを使うことで停電トラブル回避に役立ちます。寒冷地であれば、雪や凍結への備えも欠かせません。
4-2.断熱性や気密性について考慮する
家の断熱性や気密性が低いと、外の熱気・冷気や湿気が屋内へ伝わりやすくなります。その結果光熱費がかさむ上、家の中の温度差によるヒートショックや結露・カビなどの要因にもなります。
家の断熱性向上には、断熱材や断熱窓などが有効です。さらに壁の内側や屋根裏などの隙間を埋めることで気密性が高まりますが、大規模な工事が必要です。また、家を高断熱化・高気密化する場合は24時間換気システムの導入も欠かせません。
4-3.配線や配管について考慮する
水道の給排水管や電気配線も、劣化しやすいポイントです。水道管の劣化は錆水や詰まり・水漏れなどにつながり、シロアリ被害などの原因にもなりかねません。また、古い電気配線を使っていると容量不足や漏電などのリスクが上がります。
リフォームの際は水道管や電気配線の様子もチェックし、傷んだ部分は早めに交換しましょう。家電・機器類の増設や配置換えに合わせて、コンセントやLAN配線を増やすこともおすすめです。
4-4.建築確認申請が必要か調べる
建物の新築・増改築に際して建築基準法などを満たしているか確認するため、建築確認申請を行います。木造住宅を増改築する場合はたいてい申請を省略できるものの、次に該当する場合は申請が必要です。
- 車庫や昇降機などを築造・設置する
- 防火・準防火地域など
- 増改築面積が合計10平方メートル超
- 延床面積500平方メートル超
- 建物高13m超、または軒高9m超
- 3階建て以上の木造住宅や2階建て以上の非木造住宅の場合、主要構造部のうち1種類以上について過半数の修繕や模様替えを行う
ただし、2025年4月以降は木造の2階建て住宅や延床面積200平方メートル超の平屋住宅の増改築に際しても申請が必要となる予定です。
申請を要する場合は設計事務所などに申請手続きを依頼し、建築検査機関や自治体の審査を受けて検査済証を発行してもらいます。
4-5.補助金制度を使う
国や自治体は、住宅リフォーム費用を補うための制度を設けています。次の表は、国による補助金制度の一例です。
子育てエコホーム支援事業 | |
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受給条件となる工事 | 指定事業者との工事請負契約による、断熱改修やエコ住宅設備設置などの工事 |
1戸あたりの補助金額 (条件により変動あり) |
最大20万円 |
既存住宅の断熱リフォーム支援事業 | |
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受給条件となる工事 | 住宅全体、または居間中心の断熱改修工事 |
1戸あたりの補助金額 (条件により変動あり) |
補助対象経費の1/3、または120万円のいずれか少ない額 |
長期優良住宅化リフォーム推進事業 | |
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受給条件となる工事 | 省エネ、耐震性などの性能向上を目的とする改修工事および住宅診断 |
1戸あたりの補助金額 (条件により変動あり) |
補助対象経費の1/3、または80万円〔長期優良住宅認定を取得した場合は160万円〕のいずれか少ない額 |
次世代省エネ建材の実証支援事業 | |
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受給条件となる工事 |
次のいずれかに該当する工事
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1戸あたりの補助金額 (条件により変動あり) |
補助対象経費の1/2、または次の上限額のいずれか少ない額
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出典:国土交通省「子育てエコホーム支援事業【公式】対象要件の詳細【リフォーム】」
出典:公益財団法人北海道環境財団「既存住宅の断熱リフォーム支援事業」
出典:国立研究開発法人建築研究所「長期優良住宅化リフォーム推進事業 事業概要」
出典:一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和6年度 次世代省エネ建材の実証支援事業」
自治体の補助金制度は、各自治体の公式サイトなどで確認できます。他の補助金制度と重複利用できないものや先着順のものもあるため、事前によく確認しましょう。
4-6.信頼できる業者を選ぶ
住宅リフォームを手がける業者の主な種類と特徴は、次の通りです。
大手ハウスメーカー、ゼネコン | 大規模な工事も任せやすい |
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リフォーム専門会社 | リフォームのノウハウが豊富 |
設計事務所 | デザイン性が高い |
地元密着型の工務店 | コストを抑えやすい |
業者によって得意分野が変わるため、どのようにリフォームしたいか考えつつ複数業者に相見積もりを取ることが大切です。また、むやみに契約を急かす業者や見積費用が安すぎる業者などには注意しましょう。
可能であれば、家を新築した業者への再依頼も1つの方法です。新築を手がけた業者は家の構造や状況を熟知しており、家族からその業者の情報を聞けることもあるためです。
まとめ
古い家のリフォームは、住宅の寿命を延ばし、快適な住環境を維持するために重要です。リフォームには費用や工期の問題がありますが、適切な計画と施工によって多くのメリットを享受できます。リフォーム費用は場所ごとに異なり、予算に応じた計画が必要です。耐震補強や断熱工事など、現代の生活に合わせた改修も検討すべきポイントです。
また、補助金制度の活用や信頼できる業者の選定は、リフォームを成功させるために欠かせません。この記事で紹介したポイントを参考に、最適なリフォーム計画を立てて、古い家を新たな魅力に満ちた住まいへと生まれ変わらせましょう。