耐震壁とは?耐力壁との違いや特徴・種類を詳しく解説!

「耐震壁」と「耐力壁」は、どちらも地震や風などの水平力に抵抗する壁を指す言葉ですが、使われる文脈やニュアンスに若干の違いがあるのをご存知でしょうか。広い意味では「耐力壁」の中に「耐震壁」が含まれると考えると分かりやすいでしょう。また、耐震壁には、構造や材料によってさまざまな種類があります。

当記事では、耐震壁とは何かといった基礎的な事項から、耐震壁の代表的な種類・耐震壁の強度を高めるためのポイントまで分かりやすく解説します。

 

1.耐震壁とは?

耐震壁とは、地震の時に起こるような水平荷重に抵抗するために設けられた壁です。特に鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物において、周囲を梁に囲まれ、地震の揺れに耐えられるよう構造設計された耐力壁のことを指します。

耐震壁は、他の部分よりも剛性と強度が非常に高く、地震の力に対して優れた抵抗力を発揮します。

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1-1.耐力壁との違い

耐震壁と耐力壁は、基本的に同じものを指します。どちらも建物の耐震性を高める目的で設置される壁です。

建築基準法では「耐力壁」という用語が用いられ、構造にかかわらず、地震や風などの力に抵抗する能力を持つ壁全般を指します。一方、「耐震壁」は、主に鉄筋コンクリート構造計算基準などの文書で使用されることが多く、特に地震に対する抵抗力を示す場合に用いられる用語です。

そのため、木造建築では「耐力壁」、鉄筋コンクリート造では「耐震壁」と使い分けることもありますが、建築基準法上はどちらも「耐力壁」と表記されています。つまり、構造計算の分野で特に区別が必要な場合に「耐震壁」という言葉が用いられることがある、という程度の認識で問題ないでしょう。

 

2.耐震壁の代表的な種類

耐震壁には、大きく分けて以下の4つの種類があります。どの工法が優れているというわけではなく、建物の規模や用途、予算、地盤の状況などを考慮して、最適な工法を選択することが重要です。

 

2-1.筋交い

筋交いとは、柱と柱の間に対角線状に組まれた部材のことです。木造建築でよく見られ、X字型に交差させて配置することで、地震などの水平方向の力に対して建物の変形を防ぎます。筋交いには、木材や鋼材などが使用されます。

筋交いの特徴
  • 比較的簡単に施工できる
  • 古くから用いられている伝統的な工法
  • 開口部(窓やドア)を設けにくい
  • 壁の中に空間ができるため、断熱性や気密性に影響を与える場合がある

 

2-2.耐力面材

耐力面材とは、構造用合板や構造用パネルなどの面状の材料を柱や梁に直接張り付けた壁のことです。主に枠組壁工法で使用されます。

面全体で力を受け止めるため、力が分散しやすく、構造体への負担が軽減されます。そのため、筋交いに比べて耐震性能が高いのが特徴です。

耐力面材の特徴
  • 高い耐震性能を発揮する
  • 壁全体で力を分散するため、安定性が高い
  • 筋交いに比べて開口部を設けやすい
  • 気密性や断熱性を高めやすい

 

2-3.ラーメン構造

ラーメン構造とは、柱と梁を剛接合(強固に接合)することで、骨組み全体で外力に抵抗する構造です。ドイツ語のRahmen(額縁)に由来し、柱と梁で構成された骨組みが額縁のように見えることからこの名が付きました。鉄筋コンクリート造の建物でよく用いられます。

ラーメン構造の特徴
  • 壁で支える壁式構造と異なり、柱と梁で建物を支えるため、壁の位置に制約が少なく、大きな空間や自由な間取りを実現しやすい
  • 将来のリフォーム時にも間取り変更の自由度が高い
  • 柱と梁の強固な接合部が、地震の揺れによる変形を抑え、高い耐震性を発揮する(特に高層建築や大空間建築に適している)
  • 壁式構造に比べて、窓やドアなどの開口部を自由に設けられる

 

2-4.壁式構造

壁式構造とは、柱や梁といった部材を使用せず、壁全体で建物を支える構造です。鉄筋コンクリート造で用いられることが多く、特に中低層の建物(一般的には5階建て程度まで)に適しています。

壁式構造では、壁自体が耐震壁として機能します。そのため、ラーメン構造のように別途耐震壁を設ける必要はありません。壁の配置や厚さ、使用する鉄筋の量などが、建物の耐震性能に大きく影響します。

壁式構造の特徴
  • 壁全体で外力を受け止めるため、非常に高い耐震性を発揮し、特に水平方向の力に対して強い
  • 壁全体が構造体となるため、隙間が少なく、気密性や断熱性を高めやすい
  • 柱や梁の接合といった複雑な作業が少ないため、施工がしやすい

 

3.耐震壁の強度を高めるためのポイント

耐震壁の強度を高めるためには、耐震壁の施工精度が重要です。設計図通りに正確に施工されていない場合、期待される耐震性能を発揮できない恐れがあるので、実績のある業者に依頼するのが安心です。

他にも、いくつかの重要なポイントがあるので、以下で紹介します。

 

3-1.バランスよく配置する

まず、耐震壁はバランスよく配置することが重要です。建物の一方向に偏って耐震壁を配置すると、地震時に建物がねじれて倒壊する危険性が高まります。そのため、建物の四隅や外周部に適切に配置し、建物全体でバランス良く水平力を受け止められるようにする必要があります。

具体的には、平面方向だけでなく、立面方向(上下階)でもバランスを考慮することが大切です。例えば、1階に多く耐震壁を配置し、2階にはほとんどないというような偏った配置は避けるべきです。

 

3-2.量に関する構造計算を行う

次に、耐震壁の量に関する構造計算を行うことが不可欠です。建築基準法では、建物に必要な耐力壁の量が定められており、これを満たす必要があります。構造計算では、建物の形状や規模、地盤の状況、地震力などを考慮し、必要な耐力壁の量を算出し、適切な壁倍率を持つ耐震壁を配置します。壁倍率とは、壁の強さを表す指標で、数値が高いほど強い壁です。

筋交いの種類や使用する釘の種類・間隔、耐力面材の種類などによって壁倍率は異なります。構造計算によって、必要な壁量と配置が適切かどうかを確認することで、建物の耐震性能を確保できます。

 

4.耐震壁かどうかを見分ける方法

耐震壁かどうかを見分ける方法はいくつかあります。ただし、一般の方が見分けるのは難しい場合もあるので、あくまで目安としてお考えください。

最も確実な方法は、建物の設計図書を確認することです。設計図書には、構造図などが含まれており、どの壁が耐震壁として設計されているかを明確に確認できます。図面では、耐震壁とその他の壁を区別するために、記号を用いて表記している場合が多いです。例えば、「EW」という記号は「Earthquake Wall(地震壁)」の略で、耐震壁を意味します。

簡易的に確認する方法としては、壁に大きな開口部、例えばドアや大きな窓などがある場合は、その壁は耐震壁ではない可能性が高いです。耐震壁は地震などの水平力に抵抗する役割を持つため、大きな開口部があると強度が低下してしまうためです。マンションなどの集合住宅では、隣の部屋との間を仕切る壁(戸境壁)は、耐震壁として設計されていることが多いでしょう。

次に、壁を軽く叩いて音を聞く方法があります。壁をコンコンと叩いた際に、音が響かず、固く詰まったような音がする場合は、耐震壁の可能性があります。反対に、空洞のような音が響く場合は、耐震壁ではない可能性が高いです。これは、耐震壁は内部に補強材(鉄筋や合板など)が入っているため、密度が高く、音が響きにくい性質を持っているためです。ただし、この方法はあくまで簡易的な判断方法であり、壁の内部構造によっては誤った判断をしてしまう恐れもあるのであくまで参考程度としてください。

 

まとめ

耐震壁は、地震の際の横揺れに対して建物が倒壊しないように抵抗する壁のことです。建築基準法では「耐力壁」という名称で規定されており、地震や風などの外力に抵抗する能力を持つ壁全般を指します。木造建築では「耐力壁」、鉄筋コンクリート造では「耐震壁」と使い分けることもありますが、建築基準法上はどちらも「耐力壁」と表記されるのが特徴です。

耐震壁の代表的な種類としては、筋交い、耐力面材、ラーメン構造、壁式構造の4つが挙げられます。