耐震補強に重要な筋交いとは?木造住宅における役割や注意点を解説

耐震補強において重要な役割を果たす「筋交い(すじかい)」とは、住宅の構造部である柱と柱の間に斜めに入れる補強材のことです。筋交い補強により、地震や強風などの横からの力に耐え、建物の倒壊や変形を防ぐ効果があります。特に、木造住宅の耐震性を向上させるためには、筋交いの適切な配置が欠かせません。

当記事では、筋交いの基本的な役割や種類、設置時の注意点、耐震補強のポイントについて詳しく解説します。木造住宅の耐震性を高めたい方や、耐震リフォームを検討している方はぜひ参考にしてください。

 

1. 木造住宅の耐震補強に欠かせない筋交いとは

「筋交い(すじかい)」は、木造住宅における耐震補強の重要な構造要素で、柱と柱の間に斜めに取り付ける補強材です。筋交いを入れることで、地震や台風の揺れで水平方向から伝わる力を分散し、建物の変形や倒壊を防ぐ効果があります。特に、柱と梁で建物を支えている在来工法の木造戸建て住宅では、壁の強度を高めるために欠かせません。

ここからは、木造住宅の耐震補強に欠かせない筋交いとは何か、種類や役割、重要性などを分かりやすく解説します。

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1-1. 筋交いの種類と役割

筋交いには「片筋交い」と「たすき掛け」の2種類があります。片筋交いは柱の間に斜め1本の筋交いを入れる方法で、たすき掛けは「×」の形に2本入れる方法です。たすき掛けは片筋交いの2倍の強度があり、地震や台風時の揺れに対してより高い耐久性を発揮します。

筋交いや耐力面材を用いた壁は「耐力壁」と呼ばれ、一般的な間仕切り壁とは区別されています。耐力壁の強度は「壁倍率」で評価され、例えば、45×90mmの片筋交いの壁倍率は2.0ですが、同じサイズのたすき掛けでは4.0になります。さらに、筋交いプレートなどの補強金物を使用することで、より強度を高めることも可能です。筋交いは、柱と柱の間の四角形の形を維持し、建物の倒壊を防ぐ重要な役割を果たします。

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1-2. 筋交いの重要性・必要性

日本における木造建築の主流である木造軸組工法では、柱と梁を組み合わせて建物を支えます。しかし、木造軸組工法の構造は縦方向の力には強い一方で、横方向の力には弱いというデメリットがあります。筋交い構造や構造用の合板を用いた耐力壁がなければ、建物は横からの力に耐えられず倒壊の危険性が高まります。

地震の揺れや台風の強風といった横方向の揺れに対する強度を高めるために、筋交いは欠かせない部材と言えるでしょう。

建築基準法においても、筋交いの重要性・必要性が規定されており、新築時に耐力壁を使うことが義務付けられています。筋交いの素材や取り付け方についても、建築基準法施行令第45条で細かく決められているため、筋交いを含む耐力壁を適切に設置することが重要です。

出典:e-Gov 法令検索「建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)」

 

2. 耐震補強における筋交いの注意点

耐震補強工事を行う際には、筋交いの配置や施工方法について慎重に検討することが重要です。特に、耐震等級との関係、断熱材の選び方、古い住宅での施工方法には注意が必要です。

ここからは、筋交いを入れて耐力壁を強化する際に押さえておきたいポイントを紹介します。

 

2-1. 筋交いの量と耐震等級は正比例しない

建物の耐震性を示す「耐震等級」は、以下の3段階に分類され、数値が高いほど地震に強い建物となります。

耐震等級 耐震性能の目安
耐震等級1 建築基準法で定められた最低限の耐震性能(震度6強~7の地震でも倒壊、崩壊しにくい)
耐震等級2 等級1の1.25倍の耐震性能(長期優良住宅、学校、避難所など)
耐震等級3 等級1の1.5倍の耐震性能(消防署、警察署、防災拠点となる建物など)

しかし、単純に筋交いの量を増やせば耐震性能が向上するわけではありません。

耐震性を向上させるには、耐力壁のバランスや建物の重量、基礎の強度などを総合的に考慮することが重要です。適切な配置で筋交いを活用し、無駄なく耐震性を向上させましょう。

 

2-2. 断熱材との相性に注意する必要がある

木造住宅の耐震補強に使われる筋交いは、断熱材との相性に注意が必要です。適切でない断熱材を使用すると、壁の内部で結露が発生し、筋交いが腐敗する原因となります。特に、袋入りグラスウールや袋入りロックウール、発泡系断熱材の充填断熱は、湿気を閉じ込めやすく、筋交いに悪影響を与える可能性があります。ただし、付加断熱を外張りすることで、内部結露を防ぐことも可能です。

一方で、グラスウールやセルロースファイバーは筋交いとの相性が良く、結露のリスクを軽減できます。断熱材を選ぶ際には、価格や断熱性能だけでなく、筋交いとの相性を考慮し、住宅の耐久性を確保することが重要です。

 

2-3. 古い木造住宅の場合は改修工事が必要な場合がある

古い木造住宅では、現在の耐震基準を満たしていない場合があり、改修工事が必要になることがあります。特に1981年以前に建てられた住宅は、筋交いの固定が不十分なケースが多く、耐震性が低い可能性があります。

既存の壁の耐震補強の主な方法は、既存の壁を解体して筋交いや耐震パネルを入れる方法と、壁の外側から補強する方法の2種類です。解体が難しい場合は、構造用合板を貼る、耐震補強金物を設置するといった対策を講じることもできます。まずは専門家による耐震診断を受けて住宅の状態を確認し、必要な補強を検討しましょう。

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3. 木造住宅の耐震補強工事にはどのような方法がある?

耐震リフォームには、建物の強度を高めるためのさまざまな工法があります。特に重要なのが「壁の補強・増設」「基礎の補強」「屋根の軽量化」「腐朽・劣化箇所の交換」です。適切な補強を行うことで、耐震性を向上させ、地震の被害を最小限に抑えることが可能です。

ここからは、耐震補強工事の具体的な方法について詳しく解説します。

 

3-1. 壁の補強・増設

壁を補強・増設することで、建物全体の耐震性を大きく向上させることができます。壁の量を増やし、バランスよく配置することで、地震時の揺れを分散し、建物の倒壊リスクを軽減できます。具体的な補強方法としては、筋交いと筋交い金物で耐力壁にする方法、構造用合板を設置して耐力壁にする方法が一般的です。

壁の補強や増設は施工範囲によって費用が変わりますが、一般的に外壁の補強は高額になりやすく、内壁の補強のほうがコストを抑えられる傾向があります。ただし、壁を一度剥がして再施工するため、他の工法と比べて工事費用がかかる点には注意が必要です。

 

3-2. 基礎の補強

耐震補強を考える際、壁の強化だけでなく、建物の基礎部分の補強も重要です。基礎が劣化していると、いくら壁を補強しても十分な耐震性を確保できません。

基礎補強は主に「ひび割れの補修」「鉄筋コンクリート造の基礎の追加」「基礎の新設」の3つの方法があります。ひび割れた基礎にはエポキシ樹脂を注入して劣化を防ぐ補修が有効です。さらに、無筋基礎には鉄筋コンクリートを追加する増し打ち工法が用いられます。耐震性をさらに高めるには、新たに基礎を設置する基礎の新設も選択肢となりますが、大規模な工事となるため、費用が高くなる点に注意が必要です。適切な補強方法を選び、建物の安全性を確保しましょう。

 

3-3. 屋根の軽量化

耐震性を向上させる方法の1つに、屋根の軽量化があります。建物の重心が高いと地震時に揺れやすくなるため、特に重量のある瓦屋根の住宅では、軽い屋根材に変更することで耐震性を高めることが可能です。軽量化の方法としては、和瓦を「軽量瓦」や「化粧スレート屋根」、「金属屋根」などに変更する方法があります。

ただし、屋根の軽量化には一定のコストがかかるため、雨漏りや経年劣化が見られるタイミングでの施工がおすすめです。建物全体のバランスを考え、屋根の軽量化と耐震補強を組み合わせることで、より安全な住まいを実現できます。

 

3-4. 腐朽・劣化箇所の交換

木造住宅の耐震性を維持するためには、腐朽や劣化した部分を適切に交換することが重要です。特に水回りの多いお風呂や洗面所の近く、日当たりが悪い北側の部分は、湿気が溜まりやすく腐朽が進行しやすいため注意が必要です。

腐った木材は本来の強度を発揮できず、耐震性が大きく低下するとされています。土台や柱がシロアリ被害を受けている場合は、早急に交換し、防腐・防蟻処理を施すことが推奨されます。また、筋交いは他の構造材と同じ木材で作られているため、建物全体と同様に防蟻処理が必要です。

 

まとめ

木造住宅の耐震補強には、筋交いの設置が欠かせません。筋交いを適切に配置することで、地震や台風による横揺れに対する耐久性を高め、建物の変形や倒壊を防ぐことができます。しかし、耐震性を高めるには、筋交いだけでなく、基礎の補強や壁・屋根のバランス調整も必要です。

古い住宅では、筋交いが適切に機能しているかどうかを確認し、必要に応じて補強工事を行うことが求められます。耐震性の高い住宅にするために、適切な補強方法を選び、安心できる住まいを築いていきましょう。